ビーコンは雪山登山の3種の神器の1つで、登山ツアーに参加するための必須装備として指定されていることも少なくありません。
僕はソロ登山しかしないから、ビーコンなんて不要だよね
実はそうでもないんだ。
仲間に助けてもらう前提の雪崩装備がなぜ必要か不思議に思うよね。
今回はそんなよくある質問について掘り下げてみたよ
読み飛ばしガイドで気になる部分をタップしてみてください。
読み飛ばしガイド
ビーコンは雪崩に巻き込まれたときに同行者の命を救うと共に、自身が見つけてもらうために必須な道具なので、何に使うのか、どんなものを選べば良いか考えてみましょう!
あなたは雪に埋まったことはありますか?私はあります。ガチで抜け出せません。
だからこそ雪崩対策が必要なのです。総合的な選び方については以下の動画で解説しましたので、合わせて聞き流して頂けますと幸いです。
Youtubeの方では登山道具の選び方に役立つ情報をまとめていますので、
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商品名 | マムート バリーボックス | マムート バリーボックスS | オルトボックスZOOM+ |
特徴 | 8割が選ぶ定番 高性能 | プロ向け 性能にこだわる人向け | 安さにこだわる人向け 操作性は変わらない |
捜索帯域幅 | 70m | 70m | 40m |
価格 | \39,000円 前後 | \48,000円 前後 | \27,000円 前後 |
探索方式 | デジタル | デジタル アナログ | デジタル |
重さ | 205g | 210g | 200g |
バッテリー(送信時) | 300時間 | 300時間 | 250時間 |
アンテナ | 3本 | 3本 | 3本 |
詳細 | 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る |
ソロ登山だからビーコンは不要が嘘である理由
ビーコン不要論は嘘だと考えています。
というのも自己責任で済まず、『人に迷惑をかけないため』にソロでも必須装備となるからです。
詳しい理由をここから説明していきます
自然を楽しむ一人の登山者として、誰にも恥じることのない選択をしたいですね。
チェックポイント
・長時間の捜索による捜索隊の二次遭難リスクを抑えられる
・雪崩に遭遇した際に他の登山者に助けられる可能性がある
(他の登山者を救助できる可能性がある)
・救助されなかった際に家族の「何年も終わらない捜索」を防ぐことができる
長時間の捜索による捜索隊の二次遭難リスクを抑えられる
もしあなたが雪崩に遭遇したとすると、捜索隊が駆けつけることになります。
『雪崩が起きたばかりで再度雪崩が起きる危険性がある場所』に駆け付けてくれるのです。
もしビーコンがなければ捜索は難航します。危険な場所に捜索隊がとどまることになり、二次被害が起きればさらに大勢の人が巻き込まれることになります。
ビーコンがないプローブ捜索は非常に効率が悪く、時間も労力もかかります。
日本雪崩ネットワークでも20人で20時間の労力がかかることが述べられています。実際場所によってはそれ以上かかりますし、それだけかけたら見つかるというものでもありません。
あなたがビーコンを持たないことで
誰かが危険にさらされることになります。
その時批判を受けるのはあなたではなく、あなたの家族です。
それでもソロ登山にビーコンは不要と言えるでしょうか?
20人で20時間 vs. 1人で5分。
プローブによる埋没者の捜索活動は過酷です。
日本雪崩ネットワーク
雪崩による埋没者がビーコンを装着していない場合、プローブという3m程度の長さを持つ金属の棒を積雪内に突き刺すことで発見を試みます。
この原始的な方法は大変な労力を要し、20人の捜索隊員が100m×100mの範囲をカバーするのに、3点プロービング法を用いて20時間ほど掛かります。
3点プロービング法とは、隊員自身の正面・左・右の3箇所をプローブで刺して探す方法です。3mの長さのプローブを手元まで完全に積雪内に刺し込み、号令で一斉に20人が一歩前に進み、同じ作業を繰り返します。
早く見つけなければならないという焦る気持ちと膨大な労力を必要とし、精神的にも肉体的にも極めて過酷な捜索方法です。
そして、この3点プローブ法を行っても、対象区域の8~9割程度しかカバーできず、埋没者を見逃してしまうこともあります。
一方、最新の3本アンテナを内蔵したビーコンを用いた場合、捜索者が基礎的な訓練を受けていれば5分程度で位置特定が可能です。
雪崩に遭遇した際に他の登山者に助けられる可能性がある
雪崩に遭遇するときは混雑していて他の登山者も一緒にいることが少なくありません。
木曾駒ケ岳とか毎年雪崩時期も行列で混雑していますよね
その結果、ビーコンを持っていれば雪崩に巻き込まれた際に誰かに助けてもらえる可能性があります。
また、逆にあなたが誰かの命を救うことができるのです。
可能性が低くても命を守るために役立つので、ソロでも必要と言われています。
ソロでビーコンいるんか?
— MARiA麻莉亜 (@maria_yamatuber) March 17, 2022
と思ってたけど、
ビーコン持ってたら偶然雪崩に遭うところ目撃したパーティーがいた場合と
自分がソロ登山者が雪崩に遭うのを見た場合
生存確率が0じゃなくなると思い
今年はビーコン買うことにした
雪山って意外とソロの人多い https://t.co/ISValkCLan
救助されなかった際に家族の「何年も終わらない捜索」を防ぐことができる
もし救助されなかったとすると、行方不明扱いとなり、保険金は下りなければ、口座も動かせません。
無断欠勤で会社はクビになり、退職金も出ないかもしれません。
長期間の捜索は登山保険で払いきれないほどの負担としてのしかかってきます。
『もしかしたら生きているかもしれない』と思うと、お金がかかるから捜索しないでとは言えません。
行方不明とはひどく残酷な現実が待っています
家族は見つかるまで何年も待ち続けることになります。そんな現実を数万程度の出費で避けられるなら安いものではないでしょうか。
あなたに死んでも後悔する選択はとって欲しくないのです。
結論:ソロ登山者が選ぶべきビーコンは安く高性能なビーコン
登山用雪崩ビーコンは日本製のものは現行で広く流通していません。そのため、海外の為替の状況や経済状況によって価格が決まります。
加えて雪山登山やバックカントリーをする人口母数はかなり少ないので、どうしても需要が少なくなり、需要と供給の関係で値動きが激しいのです。
だからこそ、性能が高い=価格が高いとなっていないのが、他の道具と違うところです。
なんなら古い型番で性能が低い方が稀少で価格が暴騰していることもあります。
当然、このような性能が低いのに価格が高くなっているものは避ける必要があります。
最強ビーコンの一角である「マムートのバリーボックス」が値下げ傾向にあるため、
近年はマムート一強時代と言えます。3,4年前はまだオルトボックスやBCAの価格が安かったので、その時期に買った人はBCA、オルトボックスいいよと言ってますね。
少なくとも2019年以降、毎日販売数をブログで見てきた人は私以外にはいないでしょうから、相場感にはかなり自信があります。
8割の人が選ぶ 性能が高くて安い「マムート:バリーボックス」
Barryvoxは45年以上の歴史がある定番モデルです。その使用の容易さを追求していて、初心者が簡単に操作できるモデルです。
マーキング機能があり、複数の埋没者がいるときにマーキングして他の捜索者に伝え、すぐに他の埋没者の捜索に向うことができます。
捜索帯域幅が70mと広いので、探索が非常にしやすいモデルです。
プロが選ぶ 性能が最強の「マムート:バリーボックスS」
ちなみに「S(セーフティー)」がついたアナログ捜索も可能なモデルもありますが、こちらは一般登山なら過剰能力かと思います。逆にバックカントリーまでやるならSの方が良いと考えています。
細かい違いは以下に詳しく記載していますが、使いこなせばより多くの命を救うのにSの方が優れています。
実際にはバリーボックスSを選ぶのはガイドさんや山小屋勤務の方、バックカントリーツアーの関係者が多いです。
>>マムートのアバランチビーコン比較 バリーボックスとバリーボックスSの違いは?
リアルでビーコン何がいいって聞くと、
絶対バリーボックスSが良いと言われるでしょう。
特にパーティメンバーから見たらあなたの装備が貧弱なせいで雪崩で死んだら困りますからね
安全性を考えれば最強なものを勧められるので間違っていませんが、それで他の装備のグレードが下がって危険になるなら、バリーボックスにしても良いと考えています。結局は予算次第ですね。
バリーボックスのバリーとは、イヌの名前です。
バリーは今から200年以上前に、スイスのサン・ベルナール修道院で使役されていた山岳救助犬。
雪深いアルプスで山岳救助犬としてその生涯で40人以上の人命を救ったことにより、もっとも有名なセント・バーナードといわれ、サン・ベルナール修道院では今でも飼育されている犬にバリーという名前が受け継がれています。
マムートは、スイスの登山用品製造ブランドですから、この物語から、多くの命を救助するために「バリー」の名を冠したのではないでしょうか。
装着と同時に電源が入るアルバ:EVO4
アルバはフランスのアウトドアブランド、毎年アップデートを続けている老舗です。
EVO4はストラップを装着しただけで電源が自動で入るので、ソロでも電源の入れ忘れがないので、重宝しています。
写真のように赤いプラスチック部分を引っ張るとモードを切り替えできる仕組みです。
10cm以内に別のビーコンがあるので、0.1mの記載が出ています。
アルバEVO4のココが魅力
・マニュアルがわかりやすく、操作性が高い
・アンテナ3本かつ捜索帯域幅50mと平均以上の能力を持つ
・性能に対して価格が安く、4万円前後で手に入る
【電源入れ忘れゼロ】アルバのビーコンがめちゃくちゃ使い易かった件(EVO4・5、アクシオ、NEO+)
最軽量クラス170gのアルバ:EVO5
人気度だけで言えば、EVO4よりも軽量となったEVO5の方が優れています。
ただEVO5は自動電源ONの機能がなくなってしまったので、個人的にはソロ向けはEVO4の方が好きです。
バックカントリーなど軽量化で数gでも削りたい人はこちらがおすすめです。
PIEPSにも軽量モデルは出ていますが、価格考慮するとアルバの方がお得です。
● 3本アンテナ
● 最大受信範囲(縦):50m
● 捜索受信幅:40m
● 140°液晶方向指示と距離のリアルタイム自動サーチ機能
● 高性能分析処理機能16ビットプロセッサー内蔵
アルバはフランスの有名メーカーです。これまで様々なビーコンが発売され、進化してきました。
EVO5は、軽量(電池込で170g)でエントリーモデルとしては最低限の性能を抑えています。タイマーによる送信自動復帰モードもあり、モード切替を忘れていても安全です。
フランス製ですが、五か国語分(日本語、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語)のマニュアルが同封されており、使い方を身に着けるのにも苦労しません。
難点として電池蓋がマイナスドライバーで開けるタイプであることがあげられますが、頻繁に開けるわけではありませんし、いざとなれば硬貨であけることもできます。
マーキングだけは少し練習が必要ですが、操作も単純でわかりやすいです。
個人的には旧モデルのEVO4のストラップを装着すると自動で電源が入るのが好きでしたが、
軽量化されたEVO5の方が人気ですね。
最軽量・最小サイズだから、バックカントリー愛好家からも評価が高いよ
【電源入れ忘れゼロ】アルバのビーコンがめちゃくちゃ使い易かった件(EVO4・5、アクシオ、NEO+)
アルバEVO5のココが魅力
・マニュアルがわかりやすく、操作性が高い
・アンテナ3本かつ捜索帯域幅50mと平均以上の能力を持つ
・性能に対して価格が安く、4万円前後で手に入る
他モデルも検討したい方は総集編となる以下の記事をご覧ください
>>おすすめの雪山登山のビーコン(雪崩対策)実地検証レビュー
よくある質問
ビーコンの種類ってどんなものがあるの?
雪崩ビーコンはアナログ式、デジタル式、アナログ・デジタル切り替え式の3種類があります。
結論から言うと価格関係なく性能で選びたいなら、アナログ/デジタル切り替え式が最強です。
コスパを考えるなら、デジタル式です。実際のところ、ビーコン利用者の9割はデジタル式を選んでいます。
デジタル式で一番人気はマムートのバリーボックス
アナログ/デジタル切り替え式だとバリーボックスSになります。
種類 | 特徴 | 価格目安 | 性能 |
デジタル式 | アンテナ1~3本 一番の主流モデル 現行モデルの9割がこの方式 | 30000~45000円 | アンテナの本数が多いほど 捜索精度が高く、 アンテナ3本選んでおけばok |
アナログ/デジタル切り替え式 | アンテナ3本 アナログとデジタルの良いとこどりできるモデル 両方の機能が必要なので価格は高くなりがち | 50000円 | アナログの捜索範囲の広さと デジタルの捜索精度を 組み合わせた最強モデル |
アナログ式 | アンテナ1本 受信範囲が広いので遠くから捜索が可能 旧式モデルなので現行品ではほとんど販売されていない | 販売なし | 捜索範囲は広いが、 捜索精度が低い |
ビーコンって何に使うの?
雪山登山は雪崩のリスクが付きまといます。ビーコンはそんな雪崩に巻き込まれたときに捜索、救出するためのものであると同時に、自身が埋没者となったときに発見してもらうためのものです。
ビーコンは正直なくても山には登れます。でも何かあったときに命に関わるので、必ず持って行くようにしましょう。
いざというときに発見は1分1秒を争います。短時間で発見するために、プローブ(ゾンデ)と合わせて持つようにしましょう。
パーティの使ってるビーコンと機種が違ってもいいの?
検証結果:ビーコン性能は、メーカーが違っても互換性あり
ここまでいろんな製品を比較しましたが、ビーコンは他の人が持っているものとの互換性が気になるもの。ということで友人とビーコンを雪面に埋めて探す訓練をしてみました。
使用したビーコンは3種類です。異なる各メーカーでも埋没時に探知できるかを検証しました。
用意したのは3つのメーカーの商品です。
BCA TRACKER 3
アルバ アバランチビーコン EVO4
Ortovox アバランチ ビーコン S1+
アルバのビーコン はストラップ着用と同時に電源が入りますが、他2種はボタンで電源起動します。
どのビーコンでも埋める深さが50cmくらいまではスムーズに場所を特定できます。50cmくらいから方向を特定するのはコツがいるので少し練習が必要です。
また、複数の埋没者がいるときは、マーキング機能をしっかり使えるようにしておかないと、既に見つけたビーコンに反応してしまうので、効率よく探すことができません。
アルバのビーコンは、近くでマーキングボタンを押すことでマーキングが完了します。
検証は20m程度の範囲で行ったので、機種による捜索制度の差はほとんど感じられませんでした。また、画面表示もどの機種もわかりやすくなっています。
実際の雪崩の現場では大きく流されてしまうので、捜索範囲は重要になるのでご注意ください。
ビーコンは機種が違っても通信規格が統一(457khz)されているので、互換性があることを確認できました。
練習もおもしろいかつ使い方が身につくので、機会があればぜひ友人と試して見てください。
ビーコンを買ったら次はプローブ(ゾンデ)とスコップ
雪崩対策3種の神器と呼ばれているのは、ビーコン、プローブ(ゾンデ)とスコップです。
もしまだビーコンしか買っていないなら、プローブとスコップも用意しておきましょう。
スコップは雪崩で埋まったパーティメンバーを救出するのに使用します。
非常時以外でもテント泊での整地から車が埋まった場合の掘り出しまで、使用機会は多い道具です。
雪崩が起きそうな断層をカットしてリスク分析することもあります。
コンパクトさと操作性のどちらを重視するかは好みが分かれるので、それぞれ見てみましょう!
ビーコンでの捜索は距離は分かっても方角が曖昧にしかわかりません。
近くまできたら埋没者を探しあてるためのプローブが必要です。ただの棒に見えて命を救う大事な道具なんです。
その他、雪面に突き刺して積雪量を測って雪洞泊を検討したり、状況を知るための測量道具として用いられます。
使用回数が少ないならレンタルも価格が安くおすすめ
ここまでの結論をまとめると以下の通りです。価格で選ぶと選択肢は少なく、迷うことなく決めることができます。
ビーコンはマムート最強でしたね。
気になる商品があればおさらいしてみましょう。
まとめ
ここまで検討してもまだ高いと感じるなら、レンタルも検討して見ても良いでしょう。
手続きや悪天時のキャンセルなど、少し面倒ではありますが、アウトドアギアレンタルで5000円くらいで雪崩装備がレンタルできます。
年に数回しか雪山登山をしないような方は、こちらの方が安くなりますので、合わせて検討してみてください。
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