皆さんは、山で熊に遭遇したことはありますか? ほとんどの人はないと思います。なかにはそもそも熊のことなんて考えたこともない人がいるかもしれません。
ですが熊に限らず、登山を楽しむ上で自然の動物との距離感は考える必要があると思っています。 私は実際に熊と目と鼻の先に会い、これは勝てないなと感じました。この記事ではそんな熊との向き合い方をまとめていますので、ぜひご覧ください。
・登山で熊に会ったときの対処法がわかる
・登山で熊に会わない方法がわかる
登山中に熊に会うリスクとは?
熊の生息域
日本に生息する熊は、ヒグマとツキノワグマの2種がいます。ヒグマは北海道、ツキノワグマは本州全域に生息しています。九州では絶滅していますので、それ以外の地域では注意が必要です。
(中国地方、四国では絶滅危惧なので、会うことは稀です)
東海地方でも、熊は鈴鹿の低山でもある程度は生息されていることが確認されています。
(藤原岳、竜ヶ岳、御在所は目撃証言があります)
2020年は特に熊の目撃が多く、8月には上高地や燕岳、常念岳などたくさんの場所で熊が目撃されています。
私自身、北アルプスの薬師岳や雲ノ平へのアクセスとなる、折立登山口で熊に遭遇しました。
熊被害ってどんなこと?
熊は臆病な性格です。人と出会うとびっくりして襲ってくることがあります。登山における熊被害といった場合には、熊に襲われることが最も怖いことだと思います。
私が見かけた限り、熊は人を見かけても特に反応をせず、悠々と歩いていました。クーラーボックスを破壊して食料を持って行ったり、テントを持ち上げたりする被害が見られています。
熊に遭遇してやってはいけないことは必ず知っておきましょう。
2020年8月 上高地小梨平キャンプ場 女性が熊に襲われた事件
2020年の8月には上高地の小梨平キャンプ場で熊の集団に襲われ、怪我を負う事件もありました。熊に引っかかれ、病院に搬送されたと報道がありました。
人のご飯の味を知ってしまった熊は積極的に人によってくるので、捕獲が試みられることもあります。
上高地の事件もその後、熊は麻酔銃で撃たれ、死亡が確認されています。
熊にとっても人間にとっても不幸になるので、襲われないための適切な対処が必要なことがわかります。
被害を受けた女性の手記によるまとめ 元記事はこちら
・ペグダウンしていなかったテントごと引きずられた
・テントが引き裂かれ、足にけが
・背を向け逃げたが追ってこなかった
・死んでもおかしくなかったと感じた
2020年8月 北アスプス折立キャンプ場で駐車場を徘徊
2020年8月に北アルプスの折立登山口近くのキャンプ場で熊が出没していました。
元々熊がたびたび目撃されているキャンプ場なのですが、2020年は特に多く、当たり前のように駐車場内を熊が歩いていました。
キャンプ場自体は電気柵が張り巡らされており、私も中でツェルト泊をしていましたが、ときおりすぐ目の前の柵の周りを歩いており、驚きました。
私がいる間にもクーラーボックスを壊され中身を盗まれた人がいました。熊にとって人間はご飯を持っているものと学習されてしまっていると感じました。
数日後にはザックを持ち去られる事件もあり、折立キャンプ場は利用禁止。
少なくとも2頭見かけしましたが、そのうち1頭は駐車場後ろの茂みに良くいます。
車から荷物を下ろした瞬間にひょこっと出てくるので、注意が必要です。
day2*その4
— toucica (@toucicaakari) August 25, 2020
富山から折立へ。
薬師岳登山口の折立キャンプ場に到着したら、くまさんがお出迎え! pic.twitter.com/GWU8BRG479
実際にこのような熊の前で熊鈴を鳴らしてみましたが、あまり反応していませんでした。人が話していたり騒がしくしていても気にせず近寄ってきます。
なので熊に出会ったときの対処法を知っておきましょう。
熊に会ったときの対処法
では実際に熊と遭遇した場合にどんな対応をとれば良いのでしょうか?
注意すべきは大きく分けて3つです。
・熊に荷物を取られたら取り返さないこと
・背を見せて逃げないこと
・熊スプレーが有効
熊に荷物を取られたら取り返さないこと
熊は一度手にしたものは自分のものと思います。そのため、一度取られた荷物を取り返すと執拗に追ってくるので止めましょう。
背を見せて逃げないこと
また熊は背を見せて逃げる動物を追いかける習性があります。普段逃げる鹿を追いかけているからだと思います。難しいかもしれませんが、冷静に熊の方を向きながら下がりましょう。
上高地の事件の例のように、背を見せても追ってこない場合はありますが、前を向いたままのあとずさりの方がリスクが低いです。
最も有効なのは熊撃退スプレーです。離れた距離から噴射すれば熊も逃げ出せます。もしものときのために携行しても良いと思います。女性のソロ登山では、防犯のためにも有効です。
熊スプレーが有効
クマよけスプレーはツキノワグマ用の水性のものがおすすめです。
ヒグマ用は効果は強すぎて、誤射してしまった場合に他の登山者や自分自身が失明する恐れがあります。
下記の熊スプレーは安全に使えるものなので、特におすすめできます。
信頼ある熊撃退スプレー
熊撃退スプレー 中型 ホルスター付(全国の複数の国公立機関・地方自治体正式採用品)
北海道の山では中型向けのスプレーでは不足です。ヒグマに対応できるように海外製のグリズリー向けのスプレーを利用しましょう。
実際に私が北海道の羅臼岳を登る時に携行したのはカウンターアソールトでした。
そもそも熊に会わないためには?
熊に会ってからできることはどうしても限られてしまいます。なので熊に会わない方法を考えて見ましょう。
対策方法は、知床五胡のヒグマ対策講座でお聞きした内容を中心にまとめています。
・草が倒れ根元のかじられた植物が散らばっていたらすぐに引き返す。
・食糧は密閉して匂いをもらさない。
・ツキノワグマは早朝に活動することが多い。ヒグマは時間を問わず活動する
・視界が悪いところでは手を叩いたり、音を出す
草が倒れ根元のかじられた植物が散らばっていたら熊が通りすぎた痕跡です。他にどんぐりが混じる大きなふんがある場合も同様です。
夏の渓流ではエゾニュウなどを食べてベチャッとした黒いフンになります。
食料をフードコンテナで密閉すること
食糧の密閉は重要です。特に行動食、甘いもの、ポカリスエットなどのスポーツ飲料(清涼飲料水)も本当は避けた方が良いです。知床のヒグマ生息地域は持ち込み禁止だったりします。
フードコンテナやジップロックで密閉するようにしましょう。テント泊ではフードコンテナに食料を入れてテントから100m以上離れたところに保管するのが良いとされています。
人の食べ物の味を覚えた熊を増やさないためにも、野生動物にエサをあげない。ごみを捨てないようにしないといけませんね。
車が近くに止められるキャンプ場であれば、車内に食料を保管するのがおすすめです。
熊の活動時期については、繁殖期に重なるため、ツキノワグマは6月前後が一番危険で 聴覚と嗅覚は人間の比ではなく犬と同等に優れています。
視界が悪いところでは手を叩いたり、音を出すのも有効です。
鈴やラジオなども臆病な熊に離れていってもらうには効果的です。
実際にどの程度効果があるかは、続きをご覧ください。
熊鈴って効果あるの?
人の食べ物を知らない熊には効果があると言われています。
ここまで紹介したキャンプ場にいる熊には効果薄いですが、登山中に不意に遭遇してしまうような事態を避けるために、熊鈴はある程度有効だと考えられます。
海外の特に欧州では熊鈴が逆に危険な地域もあります
(それは家畜にベルや鈴を付けて放牧する地域です。このような地域では熊にとって鈴の音=餌が近づいてきた音になるからです)
とはいえ絶対的な効果があると思ってはいけないよ
熊が集中してえさを食べたりしてると気付かないことはあるかもしれない
心配なら熊スプレーの携行や他の対策も併用しなきゃってことだね
さらに山小屋内や公共交通機関内、人が多い登山道など、鳴らす必要がないところでは慣らさなくて済むような消音機能つきがおすすめです。
但し、人の食べ物の味を覚えた熊の場合、逆に近寄ってくる危険性もあるそうです。こんなかわいそうな熊を増やさないためにも、野生動物にエサをあげない。ごみを捨てないようにしないといけませんね。
熊と出会うリスクを減らして登山を楽しもう
これまで熊への対策をまとめてきました。過度に恐れる必要はありませんが、対策として十分覚えておきましょう。
百名山の恵那山など熊出没の多い山には熊鈴と熊撃退スプレーを携行するのがおすすめです。
白山の唯一のテント場 南竜ケ馬場野営場は、2019年9月に熊の目撃があり、利用停止状態になっています。熊が住み着いてしまって昼間でも現れてしまうそうです。
放置されていたゴミをクマが漁って残飯の味を覚えてしまったという噂 もありますので、こういった熊を増やさないように気をつけましょう。
登山の遭難件数として見てみると、動物の襲撃が原因の事件は少数です。
それ以外の原因についても把握しておきましょう。
また怪我やトラブル発生時の対応のためにファーストエイドキットも常備が必要です。
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・登山のファーストエイドキット!! 中身におすすめなものは何?
コメント
熊鈴が効果あるという根拠やデータはあるのでしょうか
憶測だけで効果があるでしょうと言われても説得力が全くありません
RYOさん、コメントありがとうございます。誤解を生む表現で申し訳ございません。残念ながら根拠やデータはございませんでした。経験と知床五胡のガイドの方に聞いた内容となります。熊対策に絶対の正解はないものとして、参考としてご覧いただけますと幸いです。