雪山テント泊は、夏のテント泊と同じ装備では眠れません。
私が実際に困ったこと、失敗したことをもとに、何をどう準備すれば-10度を超える環境でも眠れるかをまとめました。

この記事は、自分の失敗をもとに作ったチェックリストです。
初めてなら八ヶ岳の赤岳鉱泉か黒百合ヒュッテ、北アルプスで試すなら通年営業の西穂山荘が安全です。
装備は寝袋・マット・バーナーを無雪期用から雪山用に替えれば大きな失敗は防げます。
水場とトイレは凍る前提で計画してください。
雪山テント泊の持ち物チェックリスト
各項目の細かい選び方は後の章と各詳細記事で説明しますが、まずこの表だけで全体像が分かるようにしています。
| 持ち物 | 必要度 | ポイント | 不足するとどうなるか | 詳細 |
| 寝袋 | 必須 | 快適温度-10度以下の厳冬期対応モデル | 低体温で眠れず、最悪低体温症のリスクがある | 詳細を見る |
| マット | 必須 | 無雪期より高いR値(断熱性能)が必要 | 地面からの底冷えで眠れず、体力を削られる | 詳細を見る |
| 就寝用の防寒着 | 必須 | ダウンパンツなど下半身の保温 | 下半身の保温が追いつかず、寝袋の性能を活かせない | 詳細を見る |
| 雪用ペグ | 必須 | 割り箸やビニール袋でも代用可 | 通常のペグだけだとテントが設営できない、または飛ばされる | 詳細を見る |
| バーナー | 必須 | 寒冷地対応のガス缶、または火力の高いモデル | 火が点かず、調理も雪を溶かした水も作れない | 詳細を見る |
| テント(外張り・内張り) | 山による | 厳冬期・稜線なら実質必須、森林限界下なら無しでも可 | 結露が凍りつき、耐風性も不足しやすい | 詳細を見る |
| ザック | あると快適 | 65L以上あると冬装備が余裕を持って入る | 既存のザックでも入れば可。入らなければ外付けが増え、雪で濡れる | 詳細を見る |
| テントシューズ | あると快適 | 足元の冷えは個人差が大きい | 足先が冷えて眠れなくなることがある(体質次第) | 詳細を見る |
| ハクキンカイロ・ホッカイロ | あると快適 | 予備の保温手段として携行 | なくても眠れるが、快眠度が明確に落ちる | 詳細を見る |
| コンプレッションバッグ | 山による | 寝袋が大きい場合のみ必要 | 無くても機能面の問題はなく、パッキングが大きくなるだけ | 詳細を見る |
実際に携行した装備一式は、動画でも紹介しています。
ぼくの初めての雪山テント泊は-10度の上高地

初めてのテント泊に上高地を選びました。
今振り返ると、これはあまり人におすすめできません。
山小屋が冬季休業中で、水の調達は横尾まで歩くか、雪を溶かすしかなかったからです。
ザックの重さは17kgほどで、初めてということもあり過剰なくらいの防寒着を持ち込みました。
これから初めての雪山テント泊をするなら、西穂山荘や八ヶ岳など通年営業の山小屋があるテント場をおすすめします。
理由は後の章で説明する水・トイレ・結露の問題が、通年営業の小屋があるとかなり軽くなるからです。
八ヶ岳(天狗岳)でのツェルト泊はこちら、八ヶ岳(赤岳鉱泉)でのツェルト泊はこちらで紹介しています。
装備を1つずつ選ぶ理由

雪山登山の装備は持っている前提で説明します。
まだ用意していない人はこちらのカテゴリも確認してください。
大量の荷物でも苦にならない「ザック」
冬季テント泊は、夏より荷物が明確に増えます。
60L以上ないとかなり厳しく、荷物が多くなりがちな初心者は65L以上がおすすめです。
今のザックが入り切るなら、無理に買い替える必要はありません。
重くてもホールド力のあるザックを選ぶと、歩行中に疲れにくくなります。
容量別の選び方は雪山テント泊のザック(容量別おすすめ65L-90L)で詳しく説明しています。
極寒でも眠れる「寝袋」
冬のテント泊は、過剰なくらい暖かい寝袋を選ばないと眠れません。

普通はやらない夏マットで限界を検証して調査しました

寒さへの耐性は人によって差が大きく、私はかなり寒がりなので防寒性の高いモデルを選びました。
八ヶ岳の-14度でビビィ泊を検証したときも、ハイクラスの寝袋が厳冬期テント泊には必須という結論になりました。
詳しい比較は【-14度検証】厳冬期冬山用の登山シュラフ(寝袋)を徹底比較で確認してください。
底冷えを防ぐ「マット」

冬の寒さは夏と別物なので、マットも夏用とは違うものが必要です。
-14度の検証では、夏用の薄いマットだけだと「眠れるが1-2回目が覚める」というギリギリの結果でした。
高R値の冬用マットと、夏用マットを重ねる組み合わせが安定します。
おすすめのモデルは冬期雪山でのテント泊登山のスリーピングマット6選で紹介しています。
就寝時の防寒着「ダウンパンツ」

八ヶ岳・標高2000m付近・-14度(早朝)のビビィ泊で、就寝時の服装を検証したことがあります。
ハードシェルの上にダウンを着て寝て、脇にはカイロを挟みました。
足元はテントシューズで保温し、この構成でなんとか眠れる状態を確保しました。

どこまで防寒するかは、毎回悩むポイントです。
自分の寒さの限界が分からない初心者ほど、過剰なくらいの防寒を用意したほうが安全だと思います。
ナルゲンボトルにお湯を入れた湯たんぽも補助になりますが、朝には冷めているのであくまで補助です。
詳しくは登山のおすすめダウンパンツ「寒いテント泊の相棒」で紹介しています。
足元の冷えを防ぐ「テントシューズ」

足元の冷えはテントシューズで対策します。
一度テント泊で足元が冷えると、目が覚めて眠れなくなります。
周囲にはテントシューズなしで対応できている人もいるので、冷えの感じ方は体質次第です。
寒冷地対応か確認する「バーナー」

雪山では、火力の低いガスバーナーは使い物になりません。
寒冷地用のガス缶でないと、ガスが気化しきらない「ドロップアウト」という現象が起きます。
火力の高いバーナーか、ガソリンバーナーを検討してください。
この章の後にある「水の確保」も、バーナーの火力が前提になります。
足りない防寒を補う「ハクキンカイロ・ホッカイロ」

ハクキンカイロは使い捨てカイロより発熱量が大きいです。
空気との触媒反応で発熱する仕組みなので、密封すると効果が落ちます。
ホッカイロの「マグマ」と呼ばれるモデルは、検証した限りウルトラライトダウンを1枚増やすより暖かく感じました。
わずか50g程度なので、予備の保温として常に持っておくことをおすすめします。
詳しくはハクキンカイロって何?と登山とホッカイロで紹介しています。
結露・耐風性で選ぶ「テント(外張り・内張り)」
テントはプロモンテのVL26T(外張りなし)を複数年使っています。
晴れ・雨・雪の条件で使ってきましたが、氷点下でも結露はそれほど気になりませんでした。
メーカーはグランドシート使用を推奨していますが、穂高周辺の岩場以外では無しでも底面の破れは出ていません。
冬の快適性を上げたいなら、外張り付きの冬対応モデルへの買い替えも1つの方法です。
冬対応モデルでないと雪山テント泊ができないわけではありませんが、暖かく快適なのは冬対応モデルです。
どんなモデルがあるかは厳冬期の雪山登山で使えるおすすめテント[外張り&内張りの活用]で紹介しています。
雪山テント泊で最初に驚く「ペグ問題」

夏場と違い、雪ではペグがほとんど効きません。
雪山テント泊で、初心者が一番違いを実感するのはこのペグだと思います。
上高地での雪山テント泊で、実際に3種類の打ち方を試しました。
| 方法 | 効き目 | デメリット | 向いている人 |
| 通常ペグを横向きに埋める | △ | 素手で触ると肌がくっつくほど冷たく、翌朝ピッケルで掘り出す必要がある | 手持ちの道具だけで済ませたい人 |
| 割り箸ペグを埋める | ◎ | 翌日、下の氷ごと掘り出す必要がある | 確実に効かせたい人(評判が高い理由が分かった) |
| ビニール袋に雪を入れて埋める | ○ | 雪がさらさらだと埋めにくい | 割り箸を持っていない人 |

通常のペグは本当に効きません。
試した結果、割り箸ペグの評判が高い理由がよく分かりました。
テント自体も氷結し、撤収にも時間がかかりました。
↓日中みぞれがあり、水分量が多かったため、ペグごとガチガチに氷結。ピッケルで砕かないとダメでした。

割り箸ペグは賛否両論あるため、必ず回収して山を汚さないようにしてください。
雪でも使えるペグの選び方はこちらで紹介しています。
設営時に注意すること・結露と凍結対策
雪壁(ブロック)で風を防ぐ
テントを建てるときは、1mほど離した場所に雪の壁を作ると風の影響を抑えられます。
スコップで雪をブロック状に切り出し、積み上げて壁にすることもできます。

これは壁がテント(ツェルト)に近すぎて、風で雪が飛んできてしまった失敗例です。
1mほど離して、高さを出して作る必要があります。
スコップの選び方はおすすめの雪山登山のスコップ(スノーショベル)で紹介しています。
テント内の結露・凍結対策
テント内の結露は、主に呼気の水分が壁面で冷やされて発生します。
ベンチレーション(換気口)を少し開けておくと、結露の量を減らせます。
シュラフカバー(ビビィ)は、八ヶ岳・赤岳鉱泉で-15度以下で使用しても結露しないことを確認しています。
一方で、縫い目はシームレス加工がないと浸水するので、本格的な雨を想定するならPROモデルを選んでください。
朝起きたらテントの天井が凍っていることもあるので、撤収前にブラシや手で軽く払っておくと、ザックの中が濡れずに済みます。
水の確保と雪を溶かす手順
ナルゲン・ハイドレーションが凍る
八ヶ岳・行者小屋へのアプローチで、ナルゲンボトルの蓋が完全に凍結し、びくともしなくなった経験があります。
同行者のハイドレーション(ホース式の給水具)も凍結し、ホースから飲めなくなりました。

目の前に水があるのに、凍結で飲めなくなるとは思いませんでした。
冬山では、夏より水分補給量が少なくて済む一方、凍結すると行動中に一切飲めなくなります。
対策は、ボトルに保温カバーを付けるか、ザックのインナーポケットなど体温が伝わる位置に入れることです。
ハイドレーションを使うなら、ホースウォーマーがないと厳冬期には厳しいです。
雪を溶かして水を作る手順
山小屋の水場が冬季休業している山では、雪を溶かすのが唯一の水の確保方法になります。
鍋に少量の水か溶けた雪を先に入れてから、雪を足していくのが基本の手順です。
乾いた雪をいきなり大量に入れると、鍋底が焦げたような匂いがついたり、溶けるまでの時間がかかります。
雪には目に見えないゴミや微生物が混じっていることがあるため、沸騰させてから飲料・調理に使ってください。
この手順は火力の弱いバーナーでは時間がかかりすぎるため、寒冷地対応のバーナーが前提になります。

雪山テントのトイレ問題
通年営業の山小屋がある場所なら、トイレは小屋のものを使えます。
ただし冬季は水が出ないトイレが多く、携帯用の消臭剤や凝固剤を併用する前提で準備してください。
八ヶ岳のテント場で、携帯用の消臭剤が凍って使えなかったことがあります。
冬山の寒さは数字で知っていても、使う道具が機能しなくなるまでは実感しにくいものです。
小屋が冬季休業中で、トイレが使えない山域では、携帯トイレと凝固剤をセットで携行し、使用後は必ず持ち帰ってください。
初めての雪山テント泊では、この問題だけでも通年営業の小屋があるテント場を選ぶ理由になります。
雪山テントの食事
雪山での食事は、体温の回復とエネルギー補給を同時に意識します。
夏山以上にカロリー消費が激しいので、効率よく栄養補給をする必要があります。
温かい食べ物も、バーナーから下ろすとすぐ冷えてしまうので、煮込みながら食べられるものがおすすめです。
私は朝ごはんに、お椀で食べられるラーメンとおにぎりを一緒に煮込んでよく食べます。
ビーフシチューやカレーもおすすめで、パーティなら一緒に鍋をするのも楽しいです。
保温ボトル900mlに熱湯を入れて翌朝カップラーメンを作れないか試したこともありますが、36時間経つとさすがにぬるくなっていました(日帰り登山なら十分使えます)。
山ごはんのレシピは山で作る料理「山ごはん」に挑戦しよう!で紹介しています。
雪山テント泊で初心者が失敗すること
吹雪の上高地で実際に検証して分かった失敗を、まとめておきます。
・バーナーが寒冷地対応でなかった
・ガス缶を寝袋に入れて保温することを忘れた
・電子式ライターを持ってきたが、低温で発火せず使い物にならなかった
電子式ライターは、低温下では着火しないことがあります。
オイル式のライターか、マッチを予備として持ってください。
ガス缶は、使う直前まで懐やシュラフの中で保温しておくと、寒冷地でも火力が落ちにくくなります。
雪山テント泊におすすめの場所
八ヶ岳

赤岳鉱泉は、年末年始に大規模なビンゴ大会が開かれるため、多くの人が集まります。
テント場が広く、赤岳へのアクセスも良いのでおすすめです。
赤岳鉱泉の詳細はこちらです。
黒百合ヒュッテは、夏も冬も一年中テント場が利用できます。
軽食メニューも豊富で、快適なテント泊が可能です。
黒百合ヒュッテの詳細はこちらです。

西穂山荘(北アルプス)
北アルプス南部では珍しく、西穂山荘は通年営業しています。
新穂高ロープウェイを使えば、山荘まで歩いて1時間半ほどでアクセスできます。
冬季もテント泊に対応していますが、料金やテント設営数、水の供給方法は季節で変わるため、出発前に西穂山荘の公式サイトで最新情報を確認してください。
稜線は強風で寒さが厳しいため、独標より先に行く場合は12本歯アイゼンとピッケルが必須です。
ルート情報はヤマレコの西穂山荘ページも参考にしてください。
夏のテント泊装備から見直したい方は初心者でも大丈夫!テント泊登山の始め方!必要な装備一覧を確認してください。
よくある質問
雪山テント泊は何から揃えればいいですか?
寝袋・マット・バーナーの3つを無雪期用から雪山用に替えることを優先してください。
この3つが足りないと、眠れない・火が使えないという直接的な失敗につながります。
外張りテントは絶対に必要ですか?
森林限界より下で風が弱い場所なら、外張りなしのテントでも雪山テント泊は可能です。
稜線や厳冬期の強風が想定される場所では、外張り付きの冬対応モデルを選んでください。
雪山テント泊で一番失敗しやすいのはどこですか?
ペグです。
夏の打ち方は雪ではほとんど刺さらず抜けてしまうため、割り箸やビニール袋を使った雪用の打ち方に切り替える必要があります。
経験が浅くても雪山テント泊はできますか?
無雪期の登山経験があり、晴天予報の日に、通年営業の山小屋があるテント場を選べば挑戦しやすいです。
天候が荒れそうな日や、水場・トイレが使えない山域は、経験を積んでからにしてください。



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